さらなる美味しさを求めて。プロの技術と若い世代の感性が融合されたモンブラン『エスポワール  ~希望~ 』

黒須 剛志(くろす たかし)さん
【第4回コンテスト プロの部 準優勝】

東京製菓学校で先生をされている黒須剛志さん。

美しく美味しいモンブラン『エスポワール  ~希望~ 』で、第4回アレルギー対応スイーツコンテスト プロの部 準優勝を飾りました。

すでに、次のコンクールに向けて準備を進めている黒須さん。このインタビューは土曜に実施しましたが、なんと学校にいらしてコンクールの練習をされていました。

今回のコンテストで準優勝だったことについて、「自分では納得のいくものが作れましたが、やはり2位と順位がついてしまったのは悔しいですね…。」と語ります。

そんな黒須さんの作品エスポワールは、書類審査の段階からひときわ目を惹いていました。実は、デザインを決める段階で、製菓学校教員だかこそ実現できる取り組みをされています。

エスポワール開発の経緯と、黒須さんの今後の展望についてお聞きしました。

 

気持ちのままに “変化するお菓子” と “意思を持つ人”。教育の難しさを実感する日々。

ー黒須さん、どうぞよろしくお願いいたします!

ふだんは先生をされているとのことですが、どのような経緯で製菓学校の先生になられたのでしょうか?

小さいころからお菓子を作ることが好きで、中学生になる頃には製菓の道に進みたい思いがありました。

僕自身が東京製菓学校の卒業生で、学校に通い始めてからますます製菓の魅力に惹き込まれていきました。

卒業した後は個人のケーキ屋さんに就職しましたが、6年経ったタイミングで、今の上司(東京製菓学校の先生)に声をかけていただいたんです。

お菓子を作ることはあっても、教えることはめったにない機会だったので、挑戦してみようと思い先生になりました。

 

ーそうだったんですね!お菓子を作るのと教えるのとでは、やはり違いますか?

違いますね…。

ずっとお菓子を相手にしてきましたが、今度は人を相手にするので、自分の考えかたを変えなければいけないなと思いました。

お菓子は話しかけても何も返ってこない。僕の気持ちのままに変化してくれます。

一方、人はそうもいきません。アドバイスをすることはできても、いい方向に導いて差しあげるって難しいなと感じます。

ー人は変えられない。対して、お菓子は自分の気持ちのままに変化するというのは、なんだかとても興味深いです…。

 

ケーキの見た目は多数決で決定!アンケートをお願いした人は…

ー今回、アレルギー対応スイーツコンテストに出場されたご理由をお聞かせいただけますか?

歴代の優勝者に当校の教員が入っているのを見て、興味をもったのがきっかけです。

また、自分の友人がアレルギーを持っていて、その人が食べられるお菓子をいつか作りたいという思いもありました。

 

ーそうだったんですね。黒須さんの作品『エスポワール  ~希望~ 』は、書類審査のときから目を惹きました。

卵や乳を使ったものでも、こんなにピカピカのモンブランってあまり見かけません!

どのようなことを意識してこの見た目にされたのでしょうか?

そうですね。絞り関しては、いろんな口金(モンブランをしぼる器具)で試してみました。

あとは、当校の卒業生にもアンケートとりましたね。「どの絞りが美味しそうに見える?」って。

もちろん、美味しそうに見えるものって人それぞれ違うんですけど、一番好評だった形を採用しました。

 

ーそうだったんですね!口金を変えただけで、ずいぶん見た目が変わりそうです。

でも、在校生ではなくどうして卒業生に?

卒業生はすでにいろんなお菓子屋さんで食べ歩いてきた子たちなので、「ケーキが美味しそうに見える」という点では一番長けている、と思ったんです。

ーそんな背景が。だからあんなに素敵な見た目なんですね。

 

ケーキ屋さんでよく見かけるケーキを再現しよう

ーモンブランで出場しようと思われたのは、どうしてでしょうか?

過去の受賞作品を見てみると、お菓子屋さんでよく見かけるケーキが少なかったので、そっちで勝負してみたいなという思いがありました。

ーそうだったんですね。実際にアレルギーをお持ちのお子さんに聞いてみると、ケーキ屋さんでよく見かけるお菓子を食べてみたいという声は多いです。

 

作る上で大変だった点や、工夫した点はどんなところでしょうか。

大変だったのは、やはりアレルギー対応というところで、今まで作っていた食材から使えるものがガラッと変わったという点ですね。

同じスポンジを作ったとしても、ふわふわ感や味の濃さが全然違いましたし…。

クリームにしても、通常はスッと溶けるような口当たりのはずなのに、なかなか溶けなかったり…。

昨年の受賞者も「すごい難しかった」とお話しされていました。プロの方々って、本っっっ当〜に難しそうにお話しされるんです!

ふだんから細部までこだわられているからこそ、なおさら難しく感じるのかもしれませんね…。

 

美味しさのポイントはカシスと濃久里夢(こくりーむ)

工夫した点としては、クドさがないようなレシピにしたところです。

豆乳のクドさが残らないように、栗とも相性のいいカシスを使いました。

ー実は私、通常のモンブランってちょっとクドくて得意ではないのですが、エスポワールはすごい美味しくいただきました!

ふつうのモンブランにある “クドさ” がないといいますか…。

よくあるモンブランは、お砂糖を入れずに泡立てた生クリームを入れますが、エスポワールは各パーツの入れられる部分にはカシスを入れています。

それで、ふつうのモンブランにあるクドさが感じられないのかと思います。

 

ーいろんなところでカシスを使われているのですね。

そうですね。ぜんぶで7つのパーツから作られていますが、栗のクリーム・スポンジ・クッキー以外にはカシスを使っています。

 

ー黒須さんのレシピは、豆乳ホイップではなく、「濃久里夢(こくりーむ)ほいっぷくれーる」を使っていますよね。

毎年 豆乳ホイップを使う応募者は多いのですが、濃久里夢を使ったのはなにか理由があるのでしょうか?

濃久里夢を使ったのは、豆乳感が強くなくて使いやすかったからですね。

ただ、店頭では見かけない商品なので、コンテストの評価基準の一つ「再現性」という点では、減点になってしまうかなとも思いました。

でも、もし僕の作品が評価いただけたら、「こんな材料があるんだ!」と皆さんに知っていただく機会になるかなとも思ったんです。

そうしたら、もっとアレルギー対応スイーツの材料の選択肢が広がるかなと。

 

ーそうだったんですね。「材料の選択肢の広がり」という観点で食材選定は、プロならではの視点かもしれません。

私自身、濃久里夢は使ったことがありませんでしたが、これを機に使ってみようと思います!

 

アレルギー体質の学生さんでも食べられるケーキを

ー今後の展望をお聞かせいただけますか?

実はフランスで、植物由来の卵の代わりになる新しい食材「YUMGO(ユンゴ)」が出たので、これを使ったアレルギー対応お菓子を作ってみたいと思っています。

本当は今年使いたかったのですが、日本での発売が間に合わなかったので。

YUMGOは卵白と変わらない感じで使えて、マカロンやメレンゲも作ることができるので、アレルギー対応スイーツの幅がかなり広がると感じています。

 

そして、終わったばかりなので決めきれていませんが、来年もアレルギー対応スイーツコンテストに出場しようかなと考えています。

今は他のコンテストに向けて準備しているので、それが終わってからまた考えたいなぁと…。

 

それ以降も、なるべく年に1回ぐらいはアレルギー対応のお菓子を考えていきたいです。

毎年、学生のなかにアレルギーを多く持っている子がいるんです。

その子たちに「こういうのあるんだよ」と、実際に食べてもらって感想を聞いて、それでより美味しいものを作っていくということをやっていきたいと思います。

 

ーぜひ!またアレルギー対応スイーツコンテストにも出場ください!

次は何のコンクールに出場されるのですか?

ジャパンケーキショーといって、製菓業界で最大級のコンテストです。

昨年も出場して賞をいただけましたが、自分の中で納得のいくものが作れなかったので今年も出るつもりです。

コンテストはやったらやっただけいろんなものが身につくので、今回のアレルギー対応スイーツコンテストも応募してよかったなと思います。

ーそう感じていただけて嬉しいです!また来年もご応募お待ちしております^^

 

食べる楽しさを感じていただけますように

ー最後に、アレルギーのお子さんがいるご家族にメッセージをお願いいたします。

食べられるお菓子がまだまだ限られていると思いますが、プロである自分達が選択肢を増やしていければと思っています。

「お菓子を見るの楽しいな」「お菓子を食べるの楽しいな」と、感じていただけるお時間をご提供したいと思うので、楽しみにお待ちいただければと思います。

ーすごい楽しみにしています。ありがとうございました!

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です