齋藤 奏(さいとう かな)さん
【第3回コンテスト 一般の部 準優勝】
グランドプリンスホテル広島で、パティシエとしてお仕事をされている齋藤 奏さん。
宝石のようなスイーツ『フレーズムースショコラ』で、第3回アレルギー対応スイーツコンテスト一般の部 準優勝を飾られました。
開発にあたり 試行錯誤を繰り返したのはもちろん、職場の上司からアドバイスをいただくなど、たくさんの人の力をお借りしたそうです。
そしてなんと、『フレーズムースショコラ』は、プリンスホテル広島で数量限定で販売されたとか!
「お客さまに喜んでいただけることが本当に嬉しい」と、何度もお話されていた齋藤さん。
フレーズムースショコラ開発の経緯と、普段どのようなことを考えてお仕事に臨まれているのか、お伺いいたしました。
フルーツ盛りじゃなくて「スイーツ」をお出しできたら…
ー齋藤さん、どうぞよろしくお願いいたします。
今回、アレルギー対応スイーツコンテストを知ったきっかけはなんだったのでしょうか?
上司から教えていただきました。
レストランで働いていた時に、アレルギーのお客さまがいらしたことが何度かあったのですが、どうしてもお出しするものはフルーツ盛りになってしまうんです。
いわゆる「スイーツ」がお出しできないのが、心に引っかかっていて…。
「もっとおいしいものを出せたらな」っていう気持ちがあったので参加を決めました。
アレルギーがある方もない方も楽しめる、洋菓子店にあるようなケーキを作ろう
ー齋藤さんの作品『フレーズムースショコラ』。宝石のような、とても素敵なケーキですよね!
ありがとうございます。
「洋菓子店のショーケースに並んでいるようなケーキを作りたいな」という思いがあって、この見た目を決めるのにもいろいろと迷いました。
コンテストの審査基準に「再現性」があるので、最初はケーキにツヤを出すためのグラサージュもかけていませんでしたし、飾りつけも簡単なものにしていました。
だけど、アレルギーがある方もない方も楽しめる 洋菓子店にあるようなケーキを作ろうと思ったので、最終的にはグラサージュをかけて、飾りつけも増やしました。
ーそうだったんですね!
決勝審査当日、日本幼児食協会の小出さんが完成したフレーズムースショコラを見て、試食前から絶賛されていましたね。
小出さんからは「すごい良かったよ」ってお言葉をいただきました。とても嬉しかったです!
職場の上司からもたくさんアドバイスいただいて形にできたので、本当に周りの皆さんに感謝したいなっていう思いがあります。
最初に試作したガトーショコラは本当にボソボソ
ー卵・乳・小麦不使用というところで、大変だったことはありますか?
本当に大変でした。
卵・乳・小麦不使用で作るのは初めての経験だったので、0からいろいろ調べましたね。
最初はガトーショコラを作ろうと思いましたが、試作でできたものは本当にボソボソ。正直、あんまり美味しくないものができてしまいました。
そこから「どうしようどうしよう」っていろいろ調べてみて…。
生地を薄くしたらいいんじゃないかとか、コンフィチュール(ジャムのようなもの)で酸味を加えたらいいんじゃないかとか、いろいろ試しました。
ー特に大変だったところはどこでしょうか。
やっぱり生地ですね。
ショコラ生地を使いましたが「しっとりさせるにはどうしたらいいんだろう」と思って、何度も粉の配合を変えてみました。
はちみつやアーモンドプードルを入れたらしっとり仕上がったので、さらにくるみで風味をプラスして、美味しく食べていただけるようにしました。
焼き時間もいろいろ試しましたね。
「美味しいものをお召し上がりいただきたい」一心で
ー決勝審査はいかがでしたか?
決勝審査の時は、そうですね…。
はじまってからは「やるしかない」という感じで、あまり緊張はありませんでした。
前日まではものすごく緊張していましたし、何度も何度も時間を計って練習して、最終的にはアレルギーがない方から「おいしいよ」って言っていただけたので、「自信を持っていこう」と自分に言い聞かせて本番に挑みましたね。
とにかく 丁寧に確実に、「美味しいものをお召し上がりいただきたい」という一心で作りました。
ー「美味しいものお召し上がりいただきたい」というのは、きっと普段のお仕事の姿勢がそのまま表れているんですね。
そうですね。必ず心がけていることです。
「妥協せずに作ったものをお出ししたい」と、いつも考えています。
ホテルなので、お客様はお金も時間もかけて遠いところから来てくださっている方もいらっしゃいますし、婚礼になると一生に一度しかないので。
お客様の思い出の一部分としてスイーツがあって、感動いただけるように、「よかった」って思っていただけるように作っています。
受賞スイーツ『フレーズショコラ』が、グランドプリンスホテル広島にて数量限定販売!
ー齋藤さんがコンテストで作ったケーキは、プリンスホテル広島でクリスマスケーキとして販売されたそうですね!
あっという間に完売してしまったようですが…。
はい。上司から「またホテルで出せないか」と、第2弾・3弾のお話もいただいています。
とはいえ、やはりコンタミなどの問題が今後の課題になっているので、それらをクリアしながらにはなりますが。
ーそうですね。そもそもアレルギーがなくても命に関わる「食」をご提供されているからこそ、安全面は特にシビアになられることかと思います。
第2弾・3弾を待っている人はたくさんいらっしゃいそうですね!
はい!
完全予約制にしてご家族だけで食べてもらう形にしたり、テイクアウトのみにしたり、そういう形でお出しできるように取り組んでいけたらなと考えています。
喜んでもらえることがなによりも嬉しい
ーグランドプリンスホテル広島には、新卒時代からお勤めなのでしょうか?
はい。私の出身は島根ですが、そこから広島の専門学校に進学して、そしてプリンスホテル広島に就職して6年目になります。
ー齋藤さんはなぜ、パティシエになろうと思われたんですか?
お菓子を作るのも食べてもらうのも、小さな頃からすごい好きでした。家族に食べてもらうのが本当に嬉しくて、それが入り口ですね。
ーそうなんですね!
とはいえ、現場に出てから数年でやめてしまう方も多い業界で、こうしてご活躍されていることも素晴らしいです。
やっぱり大変なこともたくさんあって、何度も何度も泣きながらやめようかと思ったこともありました。
でも、やっぱり作るのが好きですし。
今はウエディングケーキも担当させていただき、お客様とお打ち合わせをして作っていくこともあるんです。
お客さまと一緒に考えるのも楽しいですし、なによりもお客さまに喜んでいただけることが嬉しいというか、そういう一心でやっています。
ーそうなんですね。作るのも、誰かに喜んでいただくのもお好きなんですね。
もう、親にも職場にも感謝ですね。
専門学校に行かせてもらってなければ、今の職場には勤めていなかったと思いますし。今の職場でも本当にいろんな経験をさせてもらっています。
スイーツを目の前にして「うわぁ!」って喜んでいる姿が増えますように
ー最後に、アレルギーを持っているお子さんやそのご家族にメッセージをいただけますか。
今回 初めてアレルギー対応スイーツを作ってみて、とても大変だなと感じました。毎日お忙しい中、皆さんいろんな工夫をされていることと思います。
私自身はスイーツをご提供する側として、1人でも多くの方に喜んでいただける機会をもっと増やしたいです。
レストランでお料理の最後にスイーツが出てきて、お子さんが「うわぁ!」って、すごい喜んで食べている。
そんな光景がもっとたくさん見られるように、今後もおいしいアレルギー対応ケーキを作っていきたいです。