乳アレルギーっ子ならきっと気にしたことのある、または飲んだことのある「植物性ミルク」。普及する前は豆乳が主流でしたが、近年はヴィーガンやプラントベースと言ったムーブメントの広がりもあり、植物ミルク市場はぐんと充実してきましたよね。
しかし、、、植物性ミルクの中にも別のアレルゲンあり。
今回は、皆さんがご自身のアレルゲンを避けながら、日頃の料理に使えるような植物性ミルクを選べるよう、作られる過程や味わいなどに着目した内容を全力でまとめましたので、全2編でご紹介してまいります!(前編→豆乳、アーモンドミルク。後編→オーツミルク、ライスミルク、その他のミルク)
ヴィーガン・ベジタリアン食調理アドバイザー、環境アレルギーアドバイザーなどいくつかの資格取得済。食品表示検定中級の勉強中。最近の目標は「中型バイクの運転免許を取ること」。
目次
豆乳(ソイミルク)
大豆から作られているミルク。大豆に含まれるイソフラボンが体に良いとされ、最近では人気が定着してスーパーやコンビニでも数点~数十種類のフレーバーを手に入れられるようになりました。
豆乳はどうやって作られているのか
良く洗い豆についた汚れをしっかり落とした後、豆の状態にあった水に浸し、膨らませます。豆が浸かったら、冷たい水に替えて再び浸し、豆の酸化を抑えるそうです。その後、豆をすりつぶし、豆乳とおからが混ざった状態の「呉(ご)」を作ります。呉ができたら窯に入れ、99~100℃まで焚きます。圧力を調整しながら炊き上げたら、素早く加熱を止めて絞り出します。絞り機で豆乳とおから分けたら完成です。(※参考:賀茂とうふ近喜HP)
豆乳の味わい
メーカー(製造者)によって、風味はかなり変わりますが、巷で市販されているものは基本的には飲みやすく、大豆特有のにおいやまったりとした口当たりを調整され、まるで牛乳のような「もったり感」を感じさせてくれます。今回ご紹介するミルクの中でも、一番か二番に牛乳に近いミルクかもしれませんね。
ちなみにお豆腐屋さんが作る豆乳(特に『特濃』)は、まるでお豆腐がそのまま飲み物になったかのような味わいになり、市販の豆乳のイメージで飲むとその違いにびっくりしてしまうことでしょう…。(私が豆乳を飲めた頃は、お豆腐屋さんの『特濃』豆乳にめんつゆを入れて温めて飲むのが好きでした。)
豆乳を使ったおすすめ料理
豆乳のクラムチャウダー風スープ
豆乳のあっさりした風味&もったり感が、しめじのコクとマッチして、クラムチャウダーのような味わいになるヴィーガンスープです。
材料は、油・ローリエ・ニンニク・玉ねぎ・ぶなしめじ・塩・白たまり・水・にんじん・ブロッコリー・豆乳。
お料理ビギナーでもおいしく簡単に作れちゃうので、困ったときの一品料理です。
(レシピは「庄司いずみベジタブル・クッキングスタジオ」のモノになるため、詳細の掲載は控えさせていただきますが、以前私が教えていただいた際のビデオがありますので、ご興味があります方は下記リンク(YouTube)をご覧ください)
→ 【V-cook】【VEGAN】【凍らせ野菜としめじのチャウダー風】世界一簡単なヴィーガンレシピ本クラファン「特別料理教室」講師:庄司いずみ先生(野菜料理家)Vol.3
豆乳アレルギーについて
私はもともと豆乳をガブのみしていた人間ですが、ある時期から違和感を感じ始め、今では消化器アレルギーを引き起こしてしまうようになったため、一切口にできなくなってしまいました。
(詳しくはこちらの記事でお話しております→【神保町 ほか】ポジティブパワーで蒸しまくる!米粉蒸しパン専門店「てぃだ」に突撃!)
みなさんの中にもご記憶がある方がもしかしていらっしゃるかもしれませんが、最近の『豆乳ムーブメント』よりも前、2013年頃にもテレビ番組がきっかけで空前の豆乳ブームが巻き起こったのですが、その際にも「豆乳を飲むと具合が悪くなる」という声が上がり、国民生活センターから注意喚起がされたことがありました。(参考:豆乳等によるアレルギーについて-花粉症(カバノキ科花粉症)の方はご注意を-)
そもそも食物アレルギーは、食べ物に含まれるたんぱく質を身体が異物と判断して引き起こされる、身体の防御システムによる状態ですが、このシステムにも
の2種類があり、皆さんが日々、闘われている食物アレルギーはおおよそ「クラス1」に当たります。大豆そのものがアレルゲンという方は「クラス1」になりますね。ですが、豆乳の状態でのみアレルギー反応が出てしまう方は「クラス2」に当たっているそうです。
「クラス2食物アレルギー」は『交差反応』(抗原の近いものに起因して症状が誘発される反応のこと)というものが原因で起きているそうで、身体がアレルゲンと判断しているタンパク質の形によく似たたんぱく質を含む果物や野菜を摂取してしまっても、身体が反応してしまって、アレルギー症状を引き起こしてしまうのだそうです。
実は、豆乳の「クラス2食物アレルギー」については「カバノキ科」の花粉アレルギーが関わっている可能性があることがわかっており、この花粉に含まれているアレルゲンタンパク質と似たようなアレルゲンが大豆にも含まれていることから、一部のカバノキ科アレルギー患者に『交差反応』が出てしまう可能性が高いのだそう。
ちなみに、大豆のアレルゲンタンパク質には「Gly m8」と「Gly m4」があり、特に豆乳を摂取することにより口腔アレルギー症状を起こす「Gly m4」は、加熱・発行などの加工調理をすることで活性を失いやすいという性質があり、実際、豆乳で体調を崩しやすい方も、味噌や豆腐、納豆であれば問題なく食べられるという声は、SNSなどで良く耳にします(し、私もそうです)。
しかし、豆乳からの加工程度が低い状態(豆乳鍋や湯葉など)だと症状を起こしやすくなるため、注意が必要です。(出典:マイナビTECH⁺「大豆がOKな人でも「豆乳」でのアレルギー症状に注意。突然発症する可能性も?」)
アーモンドミルク
豆乳同様に市場拡大され、手に入れやすくなった植物性ミルクの一つが「アーモンドミルク」ですよね。カフェでも国内外のメーカーのものが、ソイミルクと共に代替ミルクとしてメニューに載るお店が増えてきた印象です。
アーモンドにはエネルギー、カリウム、ビタミンE(α-トコフェロール)が豊富に含まれているんです(参考:女子栄養大学出版部「食品成分表2022本表編」)。ちなみにカリウムは、身体に必要なミネラルの一種で、細胞・神経・筋肉を健やかに保ったり、塩分の摂りすぎを調節する役割などがあり、ビタミンE(α-トコフェロール)は脂溶性ビタミンで、脂質過酸化の連鎖反応を阻止するので、身体の抗酸化作用や抗炎症作用、酸化ストレス抑制作用などが期待できるそうです。(出典:江崎グリコ公式HP)
※ビタミンEは4種類のトコフェロールと4種のトコトリエノールでできているが、人体で積極的に保持されるのはα-トコフェロールのみ。
※α-トコフェロールは、血流を介して脂質を輸送する低密度リポタンパク質(LDL)中の脂質を酸化から保護する性質がある(出典:Oregon State University)。
アーモンドミルクはどうやって作られているか
ボウルにアーモンド(無縁でローストされたもの)とたっぷりの水を入れ、一晩、冷蔵庫で浸けます。翌日、浸した水を捨て、アーモンドを軽く洗ったら、作りたい量の水を入れ、ミキサーやブレンダーで1分程攪拌する。できたものを”こし布”でろ過したら完成です。(参考:水とアーモンドだけで作るアーモンドミルクの簡単レシピと活用術)
アーモンドミルクの味わい
アーモンドミルクは、アーモンドの香ばしい風味と自然な甘みが溶け込んだ味わいです。アーモンドの風味は主張がある程度強いため、ナッツ系のアレルギーが無くても苦手な方はいるかもしれません。コーヒーやパンなど、甘みもナッツの味も合うメニューとは相性は良い一方、和食や中華とは合わせるのが難しかったりします。
アーモンドミルクを使ったオススメの料理
フレンチトースト風バゲット
バゲットにアーモンドミルク、てんさい糖(又はメープルシロップ、はちみつ、など)を溶かし、バゲットを浸し、ヴィーガンバターを溶かしたフライパンで焼き目をつけながら火を通します。
ちなみに米粉パンで作る場合は、アーモンドミルクの風味を抑えたほうが美味しく仕上がるため、水を加えて調整するといいかも。
アーモンドアレルギーについて
即時型アレルギーの原因食材について調査した結果をまとめた消費者庁の報告書によると、卵・牛乳についで多かったのが「木の実のアレルギー」(参考:国立病院機構相模原病院臨床研究センター 令和3年度調べ。食物アレルギーに関する食品表示に関する調査研究事業報告書)。
その中でもアーモンドは、くるみ・カシューナッツ・マカダミアナッツに続く第4位になっているアレルゲンとなっています。
アーモンドはバラ科の植物で、バラ科の食物にアレルゲンがある場合(りんご・なし・さくらんぼ・もも・いちごなど)口腔アレルギーを引き起こす可能性があり、さらにバラ科についても、豆乳のアレルギーで紹介したような「クラス2食物アレルギー」を発症することがあり、『交差反応』を起こすアレルゲンは「カバノキ科」(シラカンバ、ハンノキ、オオバヤシヤブシなど)が該当するそうです。(参考:口腔アレルギー症候群|一般社団法人 日本アレルギー学会)
また、カバノキ科の花粉症がある方は以下の科の食物もタンパク質の構造が似ていて『交差反応』を引き起こしやすいので注意が必要とのことです。→セリ科、ナス科、マメ科(大豆・ピーナッツが含まれます)、マタタビ科、ウルシ科。
※なお、上記の食物アレルギーの出方には個人差がありますので、詳しくはかかりつけのアレルギー専門医にご相談ください。
(ちなみに私は、ハンノキ・シラカンバのアレルギーがあり、マタタビ科のキウイフルーツやウルシ科のマンゴーを食べ里と口腔アレルギーの症状が出ますが、バラ科の食物やナス科のじゃがいも、セリ科のにんじん、マメ科のピーナッツには症状が出ません。
が、アーモンドミルクは身体があまり受け付けない感覚があります。)
盛りだくさんですみません…
次の記事では「ライスミルク」「オーツミルク」のご紹介と、今後注目されるかもしれない植物ミルク2つについても簡単に紹介します。
次回も懲りずにぜひお読みください…。
<引用・出典・参考一覧(前編)>
■豆乳の作り方|賀茂とうふ近喜
■女子栄養大学出版部 食品成分表2022 本表編(※文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)準拠)
■日本医師会生涯教育シリーズ アレルギー疾患のすべて|日本医師会編 メジカルビュー社発売
■大豆がOKな人も「豆乳」でのアレルギー症状に注意 – 突然発症する可能性も?|マイナビテックプラス
■豆乳等によるアレルギーについて-花粉症(カバノキ科花粉症)の方はご注意を-|独立行政法人国民生活センター
■ビタミンE|Linus Pauling Institute|Oregon State University
■ビタミンE | ビタミン | 栄養成分百科 | 江崎グリコ
■水とアーモンドだけで作るアーモンドミルクの簡単レシピと活用術|dressing
■国立病院機構相模原病院臨床研究センター 令和3年度調べ 食物アレルギーに関する食品表示に関する調査研究事業報告書
※本記事に含まれるアレルギー症状や栄養に関する情報は、各部分で出典・引用・参考として紹介した情報元の内容を基に記載しております。
※掲載内容は2022年9月時点の情報です。
ライター&フォトグラファー&アレルギー情報を発信している人。1992年生まれ。猫アレルギー(クラス6)なのに、実家で猫を飼っているクレイジーマン。ツレもアレルギーっ子だが、タイプが違う。
新卒の頃から都内のホテルスタジオにてフォトグラファーの下積みをしていたが、上層部から遠回しに「(アトピーの)見た目が悪い。隠せ。」と言われたり、お客様のお子様から「お姉さんはなんで胸のところがブツブツなの?」と聞かれたり…。ストレスでアレルギー&アトピー症状がブースト→2年10か月で夢やぶれ、転職。企業で広報活動などを担当しつつ、インハウスカメラマンとして微妙に活動。コロナが流行りかけの頃に「やっぱりカメラをちゃんと仕事にしたい」と思い、再び転職。旅行系webメディアに勤めつつ、培ったライティング・取材力をアレルギーに悩む多くの方々のために使いたいと思い「CAT」ライターを志願、現在に至る。SNSでも発信中(Instagaram:@redvegpes)。あ、中重度のアトピーでしたが、「デュピクセント」という高額注射に出会い超軽度になりました。詳しく知りたい方はInstagaramのDMまでご連絡ください。